父親

最近やっと父親を許せるようになってきた。

一時は、何度も○してやると思っていた。
怒りが少し静まった頃には、彼の部屋の前を通るたび早く死んでくれと祈っていた。

でも父親は、相手を威嚇したり脅したりすることでしかコミュニケーションを取れない、可哀想な人なんだと最近思うようになってきた。

気性の荒い祖母から育てられて、彼女に対する恐怖もあったのかもしれない。そもそも祖母が怒りで相手をコントロールする人だから、父もまたそれを受け継いでしまったのかもしれない。

怒りでしか相手を動かせず、何かあればすぐ怒鳴り散らし物を叩く。話し合いなんか一度だってできたことのない、およそ同じ人間とは思えなかった父を、以前はただただ恐れ、憎んでいた。

妻は出ていき子供と一切口を聞くことがなくなった父に対し、時が経つにつれ、恐怖よりも、哀れみの感情が大きくなっていった。

私が父を恐れば、自分は価値のある人間だ、強い人間だといわんばかりにニヤニヤしていた。
でも、本当は恐れられることでしか自分の価値を確立出来ない、あまりにも人間として未熟な価値観の持ち主だっただけだ。

もう彼の死を願わなくなった。かといって長生きも望んでいない。

父親を憎まなくなるときがくるとは思わなかった。毒親本とか見ても、親を許せたり、一定の距離をはかっている人たちが信じられなかった。
大人なふりをするなよ、苦しませろよ、もっと憎みきれよと思っていた。

親とちょうど良い心理的距離をはかれるようになった気がする。